実家に帰省したものの、やることがなく退屈な「私」は、なぜか、父がゴミ置き場を熱心に掃除するのを見ている。
父は娘に見られるのが嬉しいのか、掃除のやりかたを熱心に解説し始める。退屈さに負けてその話を聞きつづけていると、ひょんなタイミングで、死んだ祖母の生活哲学の話題が出てきて……。
感覚や感情は時間の流れのなかで、記憶によって留保され止まっている。
一旦停止されたそれは氷河の奥底で眠るかのように静かに止まりつづけ、そして長い時間の果てに、ひとつのきっかけが彼らを動かす。溶け出すように一時停止が再開された感情は、動きだし、みるみるうちに流れ、私たちを包む。